野生動物たちを助け、彼らが自然の中で直面する害から救う方法はたくさんある。野生動物が十分な支援を受けられるようにするためには、彼らの困難や彼らが受けている差別についての認知度を高めることが、長期的には不可欠である。しかし、短期的にも彼らのためにできることはある。野生動物を助けたいが、適切に行うための知識が不足しており、かえって害を及ぼすことを恐れる人々もいるだろう。 しかし、幸いなことに、現在の知識を活用して動物を助ける方法が存在する。すでに多くの事例がある。それら事例の多くは特定の動物を個別に助けるものであるが、大規模な集団の動物を助ける場合でも、科学的知見に基づいて行えば、悪影響を回避することができる。将来的には、この問題に関する研究が学術分野で確立され、野生動物を助ける最善の方法について、より優れた情報が得られるかもしれない。しかしながら、現在、動物をどのように助けうるか、また実際にどのように助けられているかについて、多くの人々はまだ十分に認識していない.1 。これからいくつかの事例を紹介する。
野生動物が助けられた事例は数多く記録されている。時には、少人数や個人による支援が、動物たちにとって大きな影響をもたらすことがある。また、動物救済が主な目的ではなかったにもかかわらず、動物にとって有益な政策を採用した組織や政府の努力によって、結果的に動物が助けられたケースもある(たとえば、人間の健康リスクを減らすために野生動物にワクチンを接種する場合など)。幸いなことに、私たちはこうした事例やたくさんの関連調査を通じて、野生動物を助ける取り組みに役立つ学びを得ることができる。
これらの取り組みの中には、少数の動物にしか影響を与えないものもある。そのような事例は些細なことであり、考慮すべきではないと考えるかもしれない。しかしそれらは決して些細なものではない。というのも、このような事例は、言うまでもなく助けられた動物たちにとって非常に重要であるのに加え、私たちの認識を変えうるからだ。これらの事例は、私たちが自然の中で暮らす動物たちを助けることができる、また助けるべきであるという認識を広めることに役立つ。また、これらの事例は、私たちが動物を助けるための方法を示してもいる。こうした可能性に心を開くことで、私たちが多様な文脈においてより多くの動物を助けるための行動を起こせる可能性は高まる。
以下は、野生の動物を助けるためのいくつかの方法である:
野生動物が事故に遭うことはよくある。例えば、罠にはまり、長い苦しみを伴う死に直面することもある。多くの場合、そのような動物の救出は比較的容易である。
病気と怪我は、野生に生きる非ヒト動物にとって、不幸のもうひとつの原因である。しかし幸いなことに、この分野では現在、彼らを助けるための有効な方法がいくつか知られている。
多くの動物が自然災害や火災で命を落としている。しかし、もし人間がその気になれば、多くの動物を救うことは可能であることが多い。これまで、自然災害における救助計画では非ヒト動物は軽視されてきたが、近年この状況は変わりつつある。
野生動物が命を落とす主な原因の一部は、天候の影響や食料と水の不足である。さらに食料不足の際には、餓死しない動物であっても、栄養失調や飢え、渇きに苦しむ。しかし、彼らのためにシェルターを建設することで、命を守り、大きな苦痛を防ぐことが可能である。場合によっては、動物に食料や水を提供することも可能だが、その際には非常に慎重な計算が必要である。そうでなければ、野生動物の苦痛を減らすどころか、かえって増やしてしまう可能性があるからだ。
野生の動物は、両親のどちらか、あるいは両方を失うことがある。そのような状況では、生き残れる可能性は低い。救出されない限り、ほとんどが餓死してしまう。私たちは、親を失った動物たちの代わりとなる世話をすることで、これらの動物たちを助けることができる。
私たちにもっと知識や手段があれば、野生動物をいっそう助ける方法があるはずだ。そのために最も重要なことは、私たちの社会が野生の動物を助けることに関心を持つことである。もし社会が野生動物を助けることを重要視しなければ、野生動物のニーズはいつまでも解決されない可能性がある。そのため、社会をこのような方向に導くためのアドボカシーや研究は非常に重要となる。
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なぜ野生動物の利害が重要なのか、なぜ私たちは野生動物の苦しみに関心を持たなければならないのか、その理由を提示する。
福祉生物学という学問分野を紹介する。福祉生物学とは、動物のウェルフェアに関する状況を研究する、自然科学の分野横断的な学問分野であり、生動物の苦しみや、かれらを助ける方法を評価することが期待されている。
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1 野生動物を助けられることを認めつつ、その上でかれらを助けるべきだという考えをする人々もいる。動物を助けることに反対し、野生の苦しみを称賛する意見については、Rolston III, H. (1992) “Ethical responsibilities toward wildlife”, Journal of the American Veterinary Medical Association, 200, pp. 615-622.