動物の有感性

動物の有感性

動物の有感性(sentience)〔苦しみや喜びなど価値のある感覚を感じる能力。他の記事では「感覚ある」などと訳している〕は非ヒト動物の特徴や能力を研究してきた人々の注目を浴びてこなかった。これは不幸なことだ。というのも、動物の有感性は極めて重要な問題であるからだ。有感性は、どの存在者に道徳的配慮が与えられるべきかを考えるときに問題となるものである。そのために、どのような物理的な構造が有感性にとって必要なのか、どの存在者が有感的なのか、有感的な存在者はどのような利害をもつのかを研究する必要があるのだ。

こうした問題を理解するためには、答えておくべき問いがいくつかある。

有感性を認める基準

ある特定の存在者が有感的かどうかは、どうしたら推測できるのだろうか。非ヒト動物がそれを満たすなら、その動物が有感的であると結論することができるような基準がいくつか存在する。

人間だけが有感的であるという考えについて

動物の有感性を否定する者はときおり、動物が有感的かどうかを実証することはできないと主張する。しかしそうした見解を否定する強い理由がいくつかある。

どの存在者が意識をもつのか

ある存在者が意識的であるかどうかを考える上で私たちが手にしている基準を前提するなら、〈有感的であり、それゆえ意識をもつ動物は中枢神経系をもつ〉と結論する理由がいくつかある。動物の有感性が重要であるという事実は、このことと完全に両立可能である。

どの存在者は意識をもたないのか

経験をもつために必要な物理的構造をもたない動物もいる。神経をもたない動物や中枢神経系をもたない動物がその例に含まれる。

無脊椎動物の有感性:神経科学分野の論文レビュー

この惑星上の動物のほとんどは無脊椎動物である。「無脊椎」というラベルは、全動物種の99%を占める極めて幅広い範囲の動物に当てはまる。解剖学的構造がそのように多様であるために、無脊椎動物の有感性の評価には克服しなければならない困難が多く、また、有感性をもち、害を経験しているかもしれない個体の数が莫大であるために、無脊椎動物の研究は決定的に重要である。

無脊椎動物の神経系:生理学的図解

この記事では、簡略化した図を用いて、無脊椎動物の神経系の重要な特徴を生理学の観点から検討する。無脊椎動物の多様性を反映して、無脊椎動物を特定の門に従って分類している。

動物の苦しみを表す指標

多くの非ヒト動物が有感的な存在者だと結論するとしてもなお、私たちは動物たちが苦しんでいる状況を特定できないかもしれない。どのような場合に動物の有感性が働き、苦しむのかを特定するのに役立つ指標がいくつか存在する。